変革リーダーが対処すべき5つの懸念
働き方改革、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、人事制度改革など、現代においては、いかに変革を機敏かつ効果的に進められるかが組織の命運を握っているといっても過言ではありません。そこで、今回は、変革リーダーが持つべき心構えや取るべき行動について、ケン・ブランチャード社のバイスプレジデントであるヴィッキー・ハルシー博士による記事をご紹介します。
変革によって、メンバーらはこれまでと異なる仕事のやり方を求められることになります。変革を推進するリーダーは、そうした人々が抱く懸念に向き合うことが必要です。
それは、メンバーらが変化を経験するときに湧いてくる感情に対処することでもあります。「私はこれをしたくない」「私にはそれをする時間がない」「このやり方がわからない」等といったメンバーらの気持ちのすべてに対して、リーダーは上手に対処すべきです。それができなければ、すでにパンク寸前になっているメンバーらの頭の中に、あなたが取り組もうとしている変革に関する情報を受け入れる余地が生まれることはないでしょう。
人は感情を持つ生き物です。特に、何かと目まぐるしい今の時代においては、至るところでちょっとしたストレス要因に見舞われています。そんな中で、あなたが人々に「さあ変革だ!」と呼び掛けたところで、彼らの反応はこうなります。「ご冗談を。すでに身も心も、いっぱいいっぱいですよ。」
リーダーはどうすればいいのでしょうか。リーダーとしてやるべきことは、人々に適切な問いを投げかけ、彼らが抱えている懸念を引き出すことによって、彼らの心の扉を開き、感情を表出させることです。ケン・ブランチャード社の調査から、懸念には5つの予測可能な段階(情報、個人、実施、結果、および改良)があり、リーダーはそれらの対処策を予め用意しておくことで、効果的に変革を進められることがわかりました。
変革は、まず「情報の懸念」に対処することから始まります。そこでは、「なぜそれを行う必要があるのか?どうして私たちは今のままではいけないのか?」といった人々の疑問に答えることが必要です。
メンバーらにとってはその変革は初耳です。しかし、それを忘れがちなリーダーは、いきなり変革のアピールをしようとします。リーダーらは、何ヶ月にも渡ってこの変革について検討をしてきています。すでに、リーダーたち自身は「情報の懸念」から始まる懸念の諸段階を経験してきています。そのことを忘れ、メンバーらにはいきなり変革の実行を要求し、彼らがやるべきことを伝えればよいと思ってしまいがちなのです。「この変革をすることに誰も疑問の持つはずがなく、皆が賛同する」と勝手に思い込んでしまうのです。となると何が起きるか想像するのは簡単でしょう。世の中の変革が失敗する要因のうち、70%がこの過ちに起因しています。
今日のようなせわしない時代には、変革リーダーは、より慎重なアプローチを取る必要があります。
私たちは皆、これまでにないほど変化が目まぐるしい環境の中で、何とかやりくりしながら働いています。そこに、更なる変化をもたらそうとするのですから、リーダーは、人々に心を開いて感情を吐き出す機会を与えるべきです。そうすることで、人々の中に新たなものを受け入れる余地ができます。
このステップは、人々が変革を拒むことにつながりうる懸念を引き出すのに役立ちます。それだけではありません。人々が素晴らしいアイデアを提供してくれることもあります。懸念や意見を口にし、ビジョンを表明する機会を彼らに与えることになるのです。人々に変化を強いるのではなく、変革に参画してもらうことで、彼らを活性化することができます。
では、5つの懸念の諸段階それぞれについて解説していきます。
「情報の懸念」の段階
最初の段階では、変革に関連してリーダー自身が知っていることと他の人が知る必要があることとの間のギャップを埋めることが重要です。現状でうまく機能していないことと、それを修正すべき理由、そして、組織としての方向性についての計画を共有します。
「個人の懸念」の段階
この段階になると、メンバーらはこの変革が一人ひとりにどう影響するかを理解しようとします。変革によって自分が得るもの、失うものは何かといったようなことです。この段階では、メンバーらが質問しやすいように、心理的に安全な環境を提供し、質問に答えていかなければなりません。人は様々であり、担当している業務も様々で、変革によって混乱が生じる可能性がある業務もあります。「個人の懸念」から目を背けてはいけません。メンバーらにそれらを吐き出させてあげてください。
「実施の懸念」の段階
私にはこの段階に関連して気に入っている格言があり、考え方の基盤にしています。それは「戦いを計画している人々が計画と戦うことはめったにない」というものです。
実施の段階では、変革の影響を受ける人全員の声を確実に受け止める必要があります。いつまでに何をする必要があるか、誰が良き指南役になるか、そして誰がすでに変革を受け入れ他の人々のメンターになりうるか等を見極めるために、メンバーらを参画させることが肝要です。
「結果の懸念」の段階
ここでは、人々が取り組むべきことの優先順位を明確にすることがポイントです。
この変革以外にも、メンバーらの注目を引こうとする取組みが何十とある状況下で、当変革のことが彼らの意識の最上位に来るよう工夫しましょう。リーダーは変革がもたらすインパクトや成功事例などを人々に積極的に共有すべきです。メンバーにしてみれば、変革がどんな結果をもたらしているかを知ることで、変革を持続するのに必要な活力が湧いてきます。
人は常に自分の頭の中で、「優先すべきはこれか?あれか?」を見極めようとしています。当変革について特に知らせがなければ、その変革は重要でないのだと結論付けることでしょう。一方、たとえば「変革活動により〇〇の業務プロセスの作業効率が上がった」とか「顧客満足度が上がった」などという知らせが届けば、この変革活動の優先度が高いと認識できます。
私のクライアントの方は、変革プロジェクトを推し進める中で、楽しい内容のニュースレターを発行し続けています。その企業では新しいERPソフトウェアの導入に取り組んでいるのですが、効果が出た事例を小話にして社内に共有しています。それは、「ほら、結果はこのように数値に表れています」というような内容だけでなく、変革が読み手の仲間たちにどんなメリットをもたらしたかということをストーリーで語っています。そのニュースレターは大きな反響を呼んでいるそうです。
「改良の懸念」の段階
最後の段階のポイントは、どうすれば変革を持続させ、より良いものにできるかという問いに答えることです。
この段階では、メンバーらの成功にスポットライトを当てて称賛し、その成功を一段と高める手助けをしましょう。どうすればこの変革をより良いものにできるかを問うのです。これを行うことで、リーダーが心からメンバーらのことを大切に思っていることを示すことになります。人は「自分は感謝されている」と感じるとき、自分がチームや組織にとって重要な存在であると認識できます。ここまでに学んだことを梃にして、変革を実行していくコミュニティを構築し発展させていくことができます。現実的にうまくいっていることといっていないことを把握し、変革のギアを上げ、メンバーらにとって最良の方法で機能させる方向に進み続けるのです。
全体を通して、変革の成功の確率を上げるために鍵となるキーワードは「高関与」です。
なるべく早い段階から全員を巻き込んでください。メンバーの高い関与度は変革の成功に不可欠だと思います。変革の各過程でメンバーらに発言権を与えましょう。リーダーであるあなたが、メンバーらを変革プロセスに巻き込み、彼らの懸念に対処し、彼らが輝きを放つ機会を与えることで、彼らのことをとても重要視していることを示すのです。
変革の影響を受ける人々が変革の計画と実行に関与することの必要性について、いくら強調してもしすぎではありません。高関与型の変革イニシアチブは、成功の可能性が高いです。人々は座ったままで様子見をするのではなく、勝利に向けて参画するからです。そうなれば、もはやこの変革は「リーダーの計画」ではありません—それは「彼らの計画」なのです。
原文はこちら:
Don’t Forget to Address These Five Concerns When Leading Change (kenblanchard.com)
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