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チームの仕事がAIに奪われる?~マドレーヌに聞いてみよう
AIによってあなたの仕事がなくなる日は本当にくるのでしょうか?ブランチャード社のコーチングサービス部門共同創設者であり、経験豊富なコーチであるマドレーヌ・ホーマン・ブランチャード氏による「Ask Madeleine」シリーズの和訳記事をお届けします。原文はこちら
マドレーヌさんへ
私はグラフィック・アーティストのチームで働いていますが、チーム全体の仕事が将来AI(人工知能)に置き換えてられてしまうのではないかと本当に心配しています。時間をかけて自分のスキルを磨いてきた同僚たちが、一瞬にしてテクノロジーに取って代わられるなんて、あまりに酷なことです。
私はこのことでまさにペンネームの通り、夜も心配で眠れなくなっています。どうかマドレーヌさんのご意見をお聞かせください。
「悩める睡眠不足」より
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「悩める睡眠不足」さんへ
あなたの心配はよくわかります。だいぶ昔のことになりますが、私はAI(人工知能)によって動くコンピュータ「HAL」が宇宙船を乗っ取るストーリーで有名な映画、『 2001年宇宙の旅(原題:Space Odyssey)』を映画館へ見に行った世代です。この映画は当時、私に大きな衝撃を与えました。
ChatGPTには聞いてみたことがありますか? 試しに質問を入力してみたら、とても良い答えが返ってきました!いくつか挙がった提案のうち最初の4つは、私もアドバイスするだろうと思ったこととほぼ一致していました。ただし、AIが提案しなかったのは、私がこれからするような詳細の解説を加えることです。
1.情報を常に把握しておく- この点はAIが提案していなかったのですが、私からのアドバイスとして、上司に相談し、何が起こっているかを人づてに聞き出し、自分が懸念していることがどれだけ現実的かを判断することをお勧めします。社内の他の仕事はAIに取って代わられるのか? 人間をAIに置き換える全社的な意図や戦略はあるのか? 情報を把握していればしているほど、来るべき事態に備えることができます。
2.チームメンバーのスキル開発を奨励する- AIには(まだ)できないことがやれる人なら、自分の仕事を守ることができます。特にグラフィックデザインにおいては、適切な質問を投げかけ、求められている雰囲気を正確に捉えることができる人は、代えがたい存在となるでしょう。さらに、新鮮で、これまでにない、オリジナルな作品を生み出す能力は重宝されるはずです。
3.チームの継続的な学習を促す- 人間にしかできないことを特定し、それらのスキルを磨いていく方法を見つける手助けをしましょう。問題解決や新しい表現方法を考案していく能力が求められます。
4.変化に対する柔軟性や適応力を養う- 私たちの業界では、スペンサー・ジョンソンの著書『チーズはどこへ消えた?』に基づき、人々が対処しなければならない絶え間ない変化に直面することを「チーズが消えた」と表現することが良くあります。変化のペースはここ数十年来の課題であり、加速する一方です。レジリエンスを高め、変化に対処する方法を見つけることができた人は、より質の高い人生を送ることができるでしょう。もちろん、問題は「どうやって」それを実現するかです。
脳科学の研究によれば、脳は「予測マシーン」であり、確実性に対してより快適に感じると言われています。しかし、我々の経験上、確実なことなど、どこにも存在しません。私たちがそうなって欲しいと思っていることは予測できますが、次に何が起こるかなんて誰にもわかりません。このことについて私が今まで聞いた中で最高のアドバイスは、『人生が変わる発想力(原題:The Art of Possibility)』の共著者であるベンジャミン・ザンダーからの言葉です。カリスマ的な才能を持つ指揮者として有名な彼は、とても素晴らしく、私たちを楽しませてくれる講演者でもあります。
ベンは、予期せぬことが起こったときにパニックに陥るのではなく、立ち止まって一呼吸おき、事態を観察し、「なんて素晴らしい出来事なのだ!」と自分に言い聞かせるべきだと提案しています。本質的には、私たちに好奇心を持つことを奨励しているのです。つまり、何が起きたとしても、「探求する」姿勢でそれに向き合うことが大切だと言っています。
だから「睡眠不足」に陥って悩んでいても、何の解決にもなりません。自分で本や記事を読んだり、関連する情報を調べたりしてみましょう。会社の人に話を聞いてもよいかもしれません。ポッドキャストを聞きましょう。情報を集めましょう。とにかく好奇心を持ち、そしてその好奇心を持ち続け、さらには部下の好奇心をも刺激していきましょう。あなたのチームがアーティスト集団なのであれば、皆クリエイティブなはずです。あなたが「AIによって大きな変化が起こっている中で、私たちは何を創り出していけるのでしょうか?」と問いかけていくことで、メンバーを導いていくことができるかもしれません。
私自身もこのアドバイスに従って実際に行動していくつもりです。なぜなら、あなたと同じように、私も今の世の中の変化に恐れを抱いていることを認めざるをえないからです。過去20年間、文章を書くスキルを磨いてきましたが、私がいる業界全体がAIに取って代わられるのではないかと心配している人もいます。
今日の世界の変化に対処できる唯一の方法は、「成長し、学び続け、状況に応じて自分を変えていくこと」だと私は思います。それは多くの人にとって必ずしも居心地が良いとは限らず、決して簡単なことではありません。「悩める睡眠不足」さん、そうだとしてもあなたはリーダーとして、メンバーの「ロールモデル」になることを自ら選ぶことができるのです。
愛をこめて、マドレーヌより
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マドレーヌ(著者について)
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マドレーヌ・ホーマン・ブランチャード(Madeleine Homan Blanchard)は、マスター認定コーチ、著者、講演者、ブランチャード・コーチング・サービスの共同設立者。ブランチャードのトレーニング・プログラム「コーチング・エッセンシャルズ」の共同開発者であり、『ベストを活かし、他を捨てる』、『組織におけるコーチング』、『リーダーシップのためのコーチング』などの著書がある。
マドレーヌが開発に関わったコーチング・エッセンシャルズ プログラムの詳細はこちら
コーチング・エッセンシャルズ公開講座(2024年は対面型で開催!) こちら
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