
50年前の25倍のメンバーを管理しているわたしたち
1980年代は、1人のマネージャーが管理するメンバーの人数は5人程度でした。 しかし現在では、マネージャー1人に対して直属のメンバーが25人、場合によっては75人ということも珍しくありません。その中にはマネージャーが直接会ったことのないリモートワーカーも多く含まれています。リーダーが細かく「何を、いつ、どのように行うべきか」を指示する時代は終わりました。現代の職場では従来とはまったく異なる環境が生まれており、組織の成功は、エンパワーメントされた個人が主体的に行動できるかどうかにかかっています。
解雇するのではなく、セルフリーダーシップを身に付けさせる
現代のリーダーは、メンバーに対して「指示命令型の関係」から「並走する関係」へと移行しています。それに伴い、メンバーも自らをリードする力を身に付ける必要があります。最先端の企業は、セルフリーダーを育成することが、業績向上に大きく貢献する強力な方法であることを学んでいます。セルフリーダーシップを発揮し、 積極的に行動できる従業員こそが組織の成功に大きく貢献することは言うまでもありません。
例えば、私たちが関わったあるグローバル製造企業がカリフォルニアの工場で大規模な機械トラブルが発生したことがありました。 その企業は、影響を受けた従業員を解雇するのではなく、彼らに「セルフ・リーダーシップ」のトレーニングを行うことを選択しました。 すると、面白いことが起こりました。 直属のメンバーたちが、リーダーに対して説明責任を求め、リーダーシップ能力を発揮するよう働きかけ始めたのです。 彼らはリーダーに指示と支援を求め、目標と期待値を明確にするよう促しました。 その結果、マネージャーたちは、忘れかけていたスキルを学び直し、より一層努力するようになったのです。
その後、この工場の生産回復までの時間を、過去に同様のトラブルを経験した8つの工場と比較したところ、カリフォルニア工場は、史上最速で元の生産レベルに戻ったことが判明しました。 メーカーは、この成功の要因として従業員の主体的な行動が大きく影響したと結論付けました。彼らはセルフ・リーダーシップのスキルを身につけ、高いエンゲージメントを持って業務に取り組んでいたのです。
セルフリーダーの3つのスキル
人は、意義のある貢献をしたい、そして感謝されたいと願っています。しかし、高い成果を上げるために必要なスキルや自信がない場合もあります。リーダーの役割は、直属のメンバーが最高のパフォーマンスを発揮できるよう支援することです。 リーダーやマネージャーは、いつも私に「メンバーをセルフリーダーに育成するにはどうすればよいでしょうか?」と尋ねてきます。セルフリーダーは、エンパワーメントを促進するスキルとマインドを身に付けることで育成されます。セルフリーダーシップの3つのスキルは以下の通りです。
1.思い込みの制約に疑問を持つ
思い込みの制約とは、過去の経験にとらわれ、新しい体験に制限をかける信念です。セルフリーダーシップでは、「制約があること」が問題なのではなく、「そうした信念が唯一の方法であると考えること」が問題であると教えてくれます。
2.パワーの要素を活性化させる
パワーの要素は「職位のパワー」「個人のパワー」「タスクのパワー」「知識のパワー」「関係のパワー」の5つ。パワーは、より「良い行い」をもたらすことができます。そのためには、セルフリーダーは自身のパワーの弱点を克服するか、あるいは自分にないパワーの要素をもつ人材を周囲に集める必要があります。
3.積極的に行動する
セルフリーダーは、目標を達成するために必要なものやサポートを積極的に求めようとします。直属のメンバーは、特定の目標や課題における自身の開発レベルを診断するためにセルフリーダーシップを活用し、自分の状況に必要なリーダーシップ・スタイルをリーダーに伝えることができます。
組織の成功は、すべての従業員がエンパワーメントされ、成果を出すことにコミットしているかどうかにかかっています。エンゲージメントの高い従業員が、自らの思い込みの制約に挑み、パワーの要素を活性化させ、成功に必要なツールを積極的に求める意欲的な人材で構成されている場合、個人・チーム・組織全体の成功が必然的に実現されるでしょう。
エンパワーメントされたセルフリーダーの育成について、さらに詳しく知りたい方は、60ページにわたる『Leading at a Higher Level』の要約を米国ブランチャード社のウェブサイトから無料でダウンロードできます。(英語のみとなります) ご興味のある方は、 こちらからアクセスしてください。
また私たち、ブランチャード・ジャパンは、
「セルフリーダーシップ」を題材に、2025年5月16日(金)日本の人事部「HRカンファレンス」に登壇いたします。ご興味のある方は、こちらから詳細をご確認ください。
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著者について

ケン・ブランチャード博士は、国際的なマネジメント・トレーニング・コンサルティング会社であるブランチャード社の共同設立者兼CSO(Chief Spritual Officer, 最高精神責任者)。『新・1分間マネジャー』の共著者であり、その他にも65冊の著書があります。その総売上部数は2,100万部を超えている
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