毎年、世界中から人材開発担当者が集うイベントであるATD (Association for Talent Development) カンファレンスが去る5月6日~9日に米国サンディエゴ市にて開催されました。そして、ピープルフォーカス・コンサルティング(PFC)主催ATDラーニングチームを、ブランチャード・ジャパンの石毛栄子がコーディネートしました。
今年のATDカンファレンスの基調講演者の一人は、あのオバマ前米国大統領だったこともあり、カンファレンス参加人数は1万3千人という空前の規模を記録しました。
PFC取締役のジョン・マクナルティは、オバマ氏のお話を少しでも前の席で聞きたいと思い、朝の6時に会場入りするも、すでに長蛇の列ができていたと言います。そして、ようやくオバマ氏のスピーチが始まったとき、冒頭にオバマ氏は「朝ホテルの窓から、皆さんが長い列をなして待っているのが見えた」と言い、聴衆にねぎらいと感謝の意を述べました。ジョンはその瞬間について、「話の皮切りから、私の心を捉えまえた。聴衆が1万人以上いるにもかかわらず、まるで自分ひとりに語りかけてくれているように感じられた」と言っています。
そして、オバマ氏のスピーチで印象に残ったこととして、ジョンは次をあげています。
- 自分のバリューズ(価値観)に忠実に、そして相手のバリューズを尊重すること
- チーム運営には自由と規律の両方が大事であること。規律とは、たとえば約束を守る、独りよがりで決めない、互いを支え合う等といったこと。
- 大統領には、世の中で最優秀の専門家にも決められなかったことが決裁事項としてあがってくる。もはや正しい結論は何か誰にもわからないようなことだ。大統領の意思決定として大事なのは、正しい結論を出す(make right decisions)ことではなく、正しい方法で結論を出す(make decisions right)ことだ。その方法とは、多面なステークホルダーの意見やファクトに耳を傾けることである。
さて、我らがケン・ブランチャード博士は、毎年、ATDでスピーチをしており、「ATDのレジェンド」と呼ばれています。今年もケンのスピーチ会場には何千人もの聴衆が集まっていました。そんな中、PFC主催のラーニングチームには、優先的にケンと会う特権があり、言葉を交わし、サインをもらうことができました。
今年のケンのスピーチは、ちょうど、『Servant Leadership in Action』という書籍を監修・出版して間もないこともあり、サーバント・リーダーシップがテーマでした。
サーバント・リーダーシップとは、「自分中心ではなく、他者を中心に添えるリーダーシップ」と定義され、他者の成功や成長のために自分は何ができるか、どう奉仕したらよいかに注力する考え方です。コンセプト自体は、ロバート・グリーンリーフ博士が1970年に提唱したりしていて、決して新しいものではありませんが、「今日、サーバント・リーダーシップのうねりが起きている」とケンは言います。そして、『Servant Leadership in Action』には、それを実践しているリーダーたちの体験談が紹介されています。
「従来、リーダーシップとは、権力を用いて人々をコントロールすることだと思われてきたが、もっと良いリーダーシップの方法があることに人々は気づいた」とケンは言います。メンバーを、組織目標を達成するための対等なパートナーと見なし、メンバーが活躍できるようにリーダーが力を尽くせば、おのずと組織は成功するとケンは主張します。SLII®研修を受けたことがある方なら、あの研修プログラムがそうした信念を土台に作られたものであり、具体的にどう実践するかを教えるものであることが、すぐおわかりになると思います。
また、ブランチャード・ジャパンの石毛栄子は、生のケンの様子を次のように語り、ケン自身がサーバント・リーダーそのものであることを実感したと言います。
「ケンに実際に会い、彼がレジェンドと呼ばれる理由が分かりました。ケンは優れたリーダーシップを発揮する有言実行者でした。彼はATDイベント中、毎日ブランチャードブースに足を運び、ブースに集まる多くの人たち一人ひとりに目を合わせ、出会えたことへの感謝を伝えていました。さらに印象的だったのは、初めて会う人には、相手を知るための質問やニーズを確認するための問いを必ず投げかけ、あっという間に関係構築をしてしまうことです。どんなに忙しく、限られた時間の中においても誠意と思いの込められた彼の言動に、そこに集まった人たちは皆、笑顔になってブースを後にしていました。リーダーの手本となるケンの行動はとても自然で、シンプルなものでしたが、現代のリーダーが学ぶべき姿でした。」