リーダーシップ最新調査による人材開発担当者への3つの示唆
リーダーシップの最新調査研究
ケン・ブランチャード社が2017年に行った、リーダーシップに関する実態と有効性に関する学術的調査研究の結果が発表されました。
ここでは、学術的・専門的な内容は省き、リーダーや人事開発担当者の参考になる部分をご紹介いたします。
ご存知のとおり、ブランチャードのSLII®理論では、指示的行動と支援的行動という2種類のリーダー行動の組み合わせにより、次の4つのリーダーシップスタイルを定義しています。
S1 高い指示的行動、低い支援的行動
S2 高い指示的行動、高い支援的行動
S3 低い指示的行動、高い支援的行動
S4 低い指示的行動、低い支援的行動
今回の調査で、573名の調査回答者が、どのスタイルを上司から「受けている」か、そして、どのスタイルを「求めている」かが明らかになりました。その結果は次のとおりです。
今どきのリーダーは指示しない?!
まず、どのようなリーダーシップスタイルを上司から「受けている」か、という質問について、S1が極めて低く、S4が多いという結果が出ました。S4が多いというのは、リーダーは部下やメンバーに仕事を任せていて口出ししたりしていないということです。
このことについて、ケン・ブランチャード社は、近年のスパン・オフ・コントロール(span of control=管理職が直接管理する部下の人数)の変化が要因として考えられると述べています。実際、80年代から90年代にかけ、競争激化や効率性追求のために、中間管理職の人員削減が相次ぎ、一人の管理職が直接管理する部下の数が4人から11人に増えたという調査結果があります。部下の人数が増えたために、リーダーは一人ひとりに時間を費やすことができず、S4のスタイルを取らざるを得なくなったことが想像されます。
また、S1が極めて少ない、すなわちリーダーは指示をあまりしていない、という調査結果については、変化が激しい今日において、リーダーが経験や知識がない業務を部下が担当していることが少なくなく、リーダーが指示できないということが原因として考えられます。
部下は面倒を見てもらいたい?!
一方、どのようなリーダーシップスタイルを上司に「求めている」か、という質問に対して、圧倒的に多かった答えがS2です。S2は、高指示+高支援。つまり、色々と教えてほしいし、励ましてほしいし、話も聞いてもらいたいし、といった具合に、要はリーダーにもっと面倒を見てもらうことを欲しているようです。
このような「求める」リーダーシップスタイルに対し、実際に「受けている」リーダーシップはS4(低指示+低支援)ですから、双方に大きなギャップがあります。
「状況に合わせて対応するリーダーシップ」は組織にプラスになる
次に、回答者の約半数が、「求めているリーダーシップスタイルと合致するスタイルを得られた」と回答しています。そして、合致するスタイルを得られている人は、そうでない人たちと比べて、組織や仕事に対してよりポジティブな姿勢を有していることもわかりました。具体的には、前者の人については、より自発的に行動を起こし、努力を重ねながら業績を向上させる意欲が強く、組織に対して愛着や帰属心が強く、離職するリスクが低いといった特徴が見られました。つまり、部下の状況(ニーズ)に合わせた対応を行うという、「状況に合わせて対応するリーダーシップ」という手法が組織にとても有益であることが立証されたのです。
人材開発担当者への示唆
調査報告書の中で、人材開発担当者が調査結果から得られる示唆として、ケン・ブランチャード社は次の3点をあげています。
- 部下が求めるリーダーシップスタイルを与えられるようになることで、組織へのプラス効果が期待できる。しがたって、リーダー向けの研修を企画するときは、リーダーが、部下との会話を通じて、与えるべきリーダーシップスタイルを見極めていくスキルが習得できるような内容を織り込むべきである。
- S2のリーダーシップを求めている人が59%もいるという現状を鑑み、部下の役に立つ指示的行動と支援的行動がどういうものであるかをリーダーが学び、そのスキルを練習することが必要である。たとえば、自分が経験したことのない業務を担っている部下に対して、どのような指示的行動がとりうるかといったことも学んだりすることも有効であろう。
- S4スタイルが過剰使用されていることによって生じている問題がないか、組織や職場を再点検したほうがよい。「部下に任せている」といえば聞こえはよいが、放置されている状態になっているメンバーや業務がないか、といったことが懸念される。
「人事評価をやめるべき?!」の記事でも言及したように、近年、上司と部下の会話を頻繁に持つことが重要視されています。しかし、ただでさえ多忙なリーダーが、多くの部下の面倒を細やかにみるのは簡単ではありません。したがって、いたずらに部下と接する時間を増やすのではなく、質の高い会話を行うことが不可欠です。たとえば、支援的行動を求めていない部下に対し、くどくどと励ましの言葉をかけても、部下としては“うざく”感じるだけかもしれません。あるいは、仕事のやり方をわかっている相手に対し、細かな指示を与えては、「自分のことを信用していないのか」と不信感を持たれてしまいます。どのようなときに、どのような言葉をかけたらよいのか、それを整理して学べるSLII®は、今、その有効性が増しているといって過言ではないでしょう。
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