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日本の組織が抱える重要な課題とは? ブランチャード社「2025年人事・人材開発トレンド調査」からの考察
ブランチャード社では、日本を含む世界66か国、約1000名の人事・人材開発の専門家たちから得たデータを基に、今年も「2025HR/L&D Trends Survey」を実施。今回の調査結果から、日本の組織が抱える重要な課題が浮かび上がりました。今回は、その中でも特に注目すべきポイントを紹介します。
管理職ポジションへの魅力が低下
毎年、日本が世界で最も高い数値を示す項目があります。それは「管理職ポジションへの興味が薄れる傾向にあると思いますか?」という質問です。世界的な傾向としても、管理職への関心が低下傾向にあるのですが、日本においてはその傾向が際立っているのです。
下の図1をご覧ください。
(図1)
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上図の通り、日本の結果は「とてもそう思う~どちらかというとそう思う」が78%と高く、昨年よりも6ポイント上昇。
そして「どちらかというとそう思わない」~「全くそう思わない」の割合を見ると、グローバル平均と比較して日本は半分程度になっています。特に日本の管理職は、海外と比較して報酬額が低く、さらに管理職が直面する課題は多岐にわたっています。
- コンプライアンス対応の強化
- DX(デジタルトランスフォーメーション)への適応
- ハイブリッドワークの管理
- 多様な労働形態への適応
- 心理的安全性の確保
- エンゲージメントの向上
- Z世代との関わり方
- メンタルヘルスケアの重要性、など
こうした状況の中、管理職の負担は増すばかりです。その結果、管理職というポジションの魅力は年々低下し、前回の調査よりもさらに関心が薄れる傾向が見られました。
解決策としての「セルフ・リーダーシップ」
こうした問題を解決するために、多くの日本企業が模索し始めているのが、一人ひとりの主体性といった「セルフ・リーダーシップ」の強化です。管理職だけがリーダーシップを発揮するのではなく、一人ひとりの社員が主体性を持ち、自律的に行動することが求められています。社員全員がリーダーシップを発揮できる環境を整えることで、管理職への負担を軽減し、より良い成果を組織として生み出すことができるでしょう。
“ハードに働く”から“スマートに働く”へ。一人ひとりの意識変革が求められています。
研修予算の減少傾向
次に、人の育成に向けた研修予算に関するデータを見てみましょう。「人材育成への投資をどの程度増やす予定ですか?」という質問に対して、グローバル平均では11.7%増という結果が出ました。さらに、リーダーシップ開発に関しては13.3%増と、世界的に見ても積極的な投資が進められています。
しかし、日本で全体の研修予算、リーダーシップ開発への投資額ともに、前回の調査結果よりも減少していることが分かりました。(図2)
(図2)
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投資削減の背景とは?
人的資本経営の重要性が高まる中、日本企業が研修予算の増加が鈍化しているのはなぜでしょうか? 考えられる要因の一つとして、「投資対効果の測定が効果的に行われていない」ことが挙げられます。
- 学んだ内容が現場でどの程度活用されているか?
- 研修や人への投資がチームや組織全体に与えた影響は何か?
- それによってビジネスにどのような影響があったのか?
- 投資対効果(ROI)はどのように評価できるか?
こうした点を明確に示せなければ、予算の確保が難しくなるのは当然です。
予算確保のためにできること
解決策として、言うまでもなく、しっかりと効果測定を行い、投資対効果を示すことが重要です。データを活用して、「この研修が業績向上につながった」と伝えることができれば、企業内での理解も深まり、研修予算を確保しやすくなります。
人的“資本”経営は、資産でも資源でもなく、“資本”と表現されています。つまり、資産のように貯蓄するものではなく、また資源のように消費するものでもなく、資本として投資するもの、と捉えているということが分かります。従って、投資に対するリターンがどの程度あったのか、その投資対効果を測ることが求められています。
(ブランチャード社では、長年にわたり研修や育成投資に対する効果測定の研究を行い、どのような組織でも取り入れることのできるシンプルかつ効果の高いメソッドを開発しました。ご興味ある方はお問い合わせください。)
まとめ
今回の調査では、他にも「今後強化するリーダーシップコンピテンシー」、「人材のリテンション(定着)に関する課題」、「2025年の組織課題、人事課題」など、多くの興味深いデータが示されました。人材育成や組織開発に関心のある方は、ぜひ最新の調査データを活用し、自社の課題解決に役立てて下さい。
より詳細なデータや分析結果にご興味のある方は、お気軽にブランチャード・ジャパンまでお問い合わせください!
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