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研修の企画、展開、定着

リーダーシップ研修の効果をどう測定するか(その1)

矢野経済研究所によると企業向け研修の市場規模は4970億円(2015年度)です。これには、社内講師による研修は含まれていませんから、その工数も加味すると、1兆円近いリソースが研修に投じられていることが推測されます。今日の企業の競争力向上において、人材育成への投資がいかに重要であるかを物語っているといえましょう。
しかし、それだけの投資が行われながら、企業が研修の投資対効果を測定することは滅多にありません。McKinsey Quarterlyのアンケート調査によると、「人材育成が自社のトップ10の課題に入る」とした人が90%もいながら、「業績を上げるのに研修が役立っている」と答えた人は25%、「研修のROIを測っている」と答えた人は9%しかいませんでした。


ましてや、リーダーシップ研修のような類いの研修となると、効果測定方法すらわからないという声が少なくありません。リーダーシップ強化に多額の金額を投じて研修を行ったあと、「これだけお金を使って、いったいどんな効果があったのか」という上層部からの問いにどう答えたらよいでしょうか。ここでは、一般的な研修効果測定法、SLII®の測定法、SLII®の効果測定事例の3つに分けて、シリーズでお伝えしていきます。

一般的研修効果測定方法:Holcombによる3手法

研修効果を把握するためには、定量的に測定することが必要と考える人もいれば、定性的な形式で把握すれば十分だと考える人もいます。どういう形で把握するのが適切なのかは、その会社の企業文化だったり、担当者の好みであったり、研修の種類であったりによって異なってきます。
Jane Holcomb氏は、その著書『Make Training Worth Every Penny』の中で、研修効果の評価方法には主に統計志向、ビジネス志向、従業員志向の3つがあり、それらが次の軸によって表現されると説明しています。

図1

では、3つの方法それぞれについて詳しく見てみましょう。

統計志向
統計志向を好む担当者は、ものごとを定量化し数値で把握することに意味を見出す傾向があり、厳格な測定方法を追求します。統計学手法を駆使し、可能な限り外部要因を排除し、数値結果の統計的有意性や信頼性を検証しようとします。それによって、研修に使ったお金や時間が研修効果に見合うものであったかを証明しようとします。
より厳格に行う場合は、研修の学習目標それぞれについて、目標達成度合いを測ろうともします。測定方法は、テストによる学習者の知識向上度合いであったり、学習内容に関連する業務上の数値であったりします。

従業員志向
統計志向とは対極に位置づけられるのが、従業員志向を好む人たちです。従業員がどのような学習体験を得られたかや、研修が従業員に与えた影響などを重視します。従業員は受講中にどのような反応を示していたか、研修から気づきや学びを得ていたか、積極的に意見交換を行っていたかといったことに注目します。つまり、データよりも、受講者の変化を観察することで、研修効果を評価します。
従業員志向の担当者は、所定の学習目標の達成以上に、受講者の反応を重視するので、予定外の効果(たとえば受講者の自社戦略についての理解が深まったなど)が得られたりすると、それも研修効果として評価しようとします。
また、従業員志向の人は、研修効果は受講者アンケートや受講後のヒアリング調査で把握すれば十分だと考える傾向にあります。

ビジネス志向
軸の中央に位置するのがビジネス志向の担当者です。研修の意義を自社の業績向上に見出そうとします。研修の内容は、自社の事業上の現在におけるニーズもしくは将来のニーズに即したものであるべきと考えます。そして、受講者が研修から学んだことを職場で実践しているかどうかを重視します。したがって、研修効果測定は、受講後の実践状況を把握することに主眼が置かれ、同時に受講後のフォローアップにも力を入れる傾向にあります。

このように、人によって、あるいは企業文化によって、研修効果把握についての好みは異なります。また、研修プログラムによっても適した方法が異なることでしょう。研修企画担当者としては、自分の上司や上層部がどの種の研修効果把握を期待しているのかを事前に確認しておくとよいでしょう。研修効果の把握方法によって、研修内容の設計や事前に収集すべき情報、研修中に見ておくべきことが変わってくるからです。

リーダーシップ研修のようなソフトスキル系の研修の場合は、従業員志向の評価プロセスが一般的ですが、ビジネス志向も有効です。リーダーシップ研修を統計志向で効果測定することは不可能ではありませんが、測定に相当な工数(測定する人だけでなく、される人、すなわち受講者たちの負担も含む)がかかることを認識した上で、それでもなお測定する必要があるかどうかを考慮すべきでしょう。

次回は5レベルの研修効果測定方法と、それをSLII®に当てはめた場合について解説いたします。

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