『1分間マネジャー』の誕生秘話:ケン・ブランチャード博士が語る過去、現在、そして未来
我らがケン・ブランチャード博士が、イギリスのビジネス誌であるSurrey Business2019年4月26日号の表紙を飾りました。そして、同誌のインタビューで、『1分間マネジャー』を書くことになったきっかけ、それが世界中の人々に読まれた理由、肩書きが「最高スピリチュアル責任者」である理由、今後の展望などを語りました。
その日本語訳をここにご紹介します。ケンの人間性に溢れたインタビューを是非、ご一読ください。
原文はこちら (P28-29)
ケン・ブランチャード氏との「1分間」以上の会話
1500万部以上を売り上げた『1分間マネジャー』は、世界でもっとも広く読まれているビジネス書の一つです。同書の上梓後、リーダーシップ分野の専門家であるケン・ブランチャード氏は、65冊以上に著者として名を連ねましたが、それらは47ヶ国語に翻訳され、合計販売数は 2,300万冊に上っています。その人気の秘訣は簡潔さ、あるいはメッセージのシンプルさにあるのかもしれません。成功の秘訣が何であれ、重々しいマネジメント・テクニックが満載された分厚いビジネス書が主流であった中、1982年発行の『1分間マネジャー』は業界に清風をもたらしました。2015年に再版された『新・1分間マネジャー』は現在もベストセラーリストに掲載され、あらゆるレベルのリーダーたちから賞賛を受け続けています。
スペンサー・ジョンソン氏との共著である『1分間マネジャー』は、人をやる気にさせ、結果を出すことができる効果的なマネジャー像を探求する、ある若者を中心に展開します。この若者の経験では、マネジャーのタイプは独裁的(対人スキルに欠け、結果を出すことのみに集中)かあるいは民主的(人間関係に優れるが結果を出せない)のどちらかです。しかし彼はある日、「1分間目標」「1分間賞賛」「1分間修正(前「1分間叱責」)」という3つから成る、シンプルながら効果的な方法を駆使する「1分間マネジャー」なる人物に出会います。このマネジャーは人と結果の両方を重視し、人と組織の両方が彼のマネジメントによって向上します。
同書の内容はシンプルですが、ブランチャード氏がマサチューセッツ大学教授として教鞭をとっていた時期から1979年のケン・ブランチャード社設立、そして同社がリーダーシップ研修の開発企業として国際的に認められるようになる過程で、そのマネジメント哲学はより洗練されていきました。
ブランチャード氏は、最高スピリチュアル責任者として、今年40周年を迎えるケン・ブランチャード社で精力的に活動し、出張スケジュールをこなしています。その革新的なリーダーシップ開発プログラムは、マネジャーと部下の関係だけではなく、組織全体の変革に向けて設計されています。教室での研修セッションおよびインターネットによる遠隔セッション、自分のペースで学べるeラーニング・モジュール、コーチング、基調講演、公開講座などを通し、ケン・ブランチャード社は今日の企業が直面する重要課題に対し、効果の立証されたソリューションを提供しています。
ブランチャード氏とマージー夫人は会社設立の際、3つのシンプルな目標を掲げました。「人々の人生をよりよくすること」「職場における人の価値と効果を高めること」そして「優良な提供者・雇用者・ 投資先となるよう顧客企業を助けること」です。これらの目標は今日も同社に根付いています。
サーレイ・ビジネス・マガジンは人々に感銘を与えるこの国際的なビジネスリーダーから話を聞く機会を得、ビジネス界に広く影響を与えた彼のキャリアについて尋ねました。
リーダーシップ研修を複雑にし過ぎる会社がありますが、我々のプログラムは常識をベースに構築されています
サーレイ・ビジネス・マガジン(SBM):ケンさん、『1分間マネジャー』を共著されて以来、あなたは、複雑なトピックを、理解しやすく、覚えやすい概念に噛み砕いて説明されることで知られています。『1分間マネジャー』を書こうと思ったきっかけは何だったのですか?
ケン・ブランチャード:かつてジョン・レノンが「人生の出来事は、忙しく他の計画を立てている最中にあなたにふりかかってくる」と言っていたのを思い出します。妻のマージーと私があるカクテルパーティーに出席し、マージーがスペンサー・ジョンソンと談話していたときのことです。当時、スペンサーは『Value Tales(意義の物語)』という児童書のシリーズを執筆していました。『Value Tales(意義の物語)』には『真実を語る意義;エイブ・リンカーン物語』や『強い意志をもつ意義:ヘレン・ケラー物語』などが含まれていました。マージーはスペンサーを私のところへ引っ張ってきて、「あなた方二人でマネジャー向けの児童書を書くべきよ。あの人たちは他のものは読まないんだから」と言うのです。その後まもなく、私たち二人は『1分間マネジャー』を執筆し始めました。スペンサーは児童書の書き手、私は物語の語り手ですので、寓話形式で書くことにしたのですが、それが結果的に良かったようです。
SBM:『1分間マネジャー』の初版が出たのは37年前です。マネジメントの原理は当時と同じですか?
ケン:同じですね。先日、ある若者に会ったのですが、彼は、「父が初めてマネジャーになったとき、祖父が父にあなたのご著書をプレゼントしたそうです。私が初めてマネジャーになったときにも、父がご著書を私にプレゼントしてくれました」と言っていました。数年前に『新・1分間マネジャー』を執筆し、21 世紀にふさわしいようリニューアルしました。最も重要な更新点は、「1分間叱責」を「1分間修正」に変更したことです。近年、効果的なマネジャーのほとんどが、トップダウン型から寄り添い型のリーダーシップに移行しています。「1分間修正」は「1分間叱責」よりも、この新タイプのリーダーシップによく合っています。物語と他の概念はこれまでと変わりありません。
SBM:長年にわたるお仕事を通し、世界中の何百万人もの人が、より良いマネジャーを目指すことを助けて来られたと思います。誰でも優れたマネジャーになりえるのでしょうか?
ケン:学びに対してオープンな人であれば、そして、ときに自分のやり方を離れ、自分ではなく他の人にフォーカスする余裕を持てる人であれば、誰でもマネジャーになれます。
SBM:肩書を「最高スピリチュアル責任者」としたのはなぜですか?
ケン:何年も前ですが、マージーは我が社の「未来部門(Office of the Future)」のヘッドでした。この部門は 業界や世界において重要なことが起こっているのを見逃さないよう、将来に向けてのトレンドを観察する役目を担っていました。未来部門が観察していたトピックの一つが、職場においてスピリットを生み出すことでした。これは私をわくわくさせる概念でしたので、「最高スピリチュアル責任者」に就任することにしたのです。
SBM:どうすれば職場にスピリットを生み出すことができるのでしょうか?
ケン:スピリットを生み出す源は、社員が帰属意識をもち、認められ、大切にされる環境です。偉大な企業は社員をナンバーワンの顧客として待遇します。社員に権限委譲し、社員が学び、研修する機会を与え、社員を大切に思えば、彼らは企業にとって2番目に重要な顧客、その商品やサービスを使用する人たちを大切にするのです。その結果、商品やサービスの使用者たちは、その企業の大ファンになり、さらにその企業を周囲に宣伝してまわるようになるのです。そうすれば、利益や株主へのリターンは自然についてきます。
SBM:毎朝、全社員にメッセージを送られるそうですが、そのことをお話しいただけますか?
ケン:まず、誰のために祈るべきかを伝えます。我が社の社員は多様性が高いのですが、「メアリーのお母さんは痛みと戦っていて、メアリーはお母さんのことをとても心配しています。メアリーと彼女のお母さんに愛と祈りを送りましょう」と私が言った場合、これに異議を唱える人はいません。それから、賞賛を伝えます。長年にわたって教えてきましたが、人が正しいことをしているのを見つけ、「1分間賞賛」するのは、最も楽しいことです。それから逸話を語ったり、詩を朗読したり、その日のためにポジティブな考えを伝えます。我が社は遠隔勤務の社員が多いのですが、朝のメッセージは社員がより強い連帯感をもつのに役立つ、と言われます。
SBM:ケンさん、あなたは今年80歳のお誕生日を迎えられますが、現在も著者、講演者、ビジネス・コンサルタントとして活躍しておられます。お仕事をしておられない時は、どんなことを楽しんでいらっしゃるのですか?
ケン:妻のマージーと過ごすのが楽しいですね。結婚して57年になりますが、マージーは職場でも家庭でも、私の親友です。ゴルフも大好きですし、大学バスケットボールの試合を見るのも好きですよ。
SBM:ケン・ブランチャード社の研修コースをリーダーに奨める理由は何ですか?
ケン:我々は常識に基づいた研修プログラムを提供し、 顧客サービス、コーチング、信頼、動機付け、変革、チーム・セルフリーダーシップなどのトピックを通して、リーダーが組織をよくするお手伝いをしています。また、初めてマネジメントの仕事をする方のための「マネジメント・エッセンシャルズ」研修や、世界で最も広く使用されているリーダーシップ・モデルであるSLII®研修 を提供しています。リーダーシップ研修を複雑にし過ぎる企業がありますが、我々のプログラムは常識をベースに構築されています。私が共著してきたほとんどの著作同様、シンプルな真実や概念が多く含まれ、容易に仕事や人生に適用することができます。
SBM:御社は今年創立40周年を迎えられます。未来に向けて、どのようなビジョンをお持ちですか?
ケン:もちろん我が社が永遠に継続してほしいですね、40年とは!そんなに長く続く会社は5%もないですよ。私のビジョンは、ケン・ブランチャード社が私や他の特定の人に依存することなく継続し、我々のリーダーシップの概念が永続することですね。そしてリーダーたちが世界をよりよくする手伝いをし続けてくれることです。
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